「環境にもよく、健やかな鶏を育てたい」愛媛でサステイナブルチキンをつくる旅田昌典さんの想いとは。

農業の修行をしたいと愛媛に移住したたびちゃんファームの旅田昌典(たびたまさのり)さん。和歌山県で生まれ育ったが、農業の修行をしてみたいと思い愛媛へ移住。その後、農業に関わる中で鶏を育てる畜産農業をしてみたいと思い、たびちゃんファームとして活動を始めた。

畜産農業のひとつである鶏の生産は、主に人々の食生活のため短期間で狭い場所で大量生産される方法で生産されている。その方法では、鶏の健康状態にも環境にも良くないと考えた旅田さん。

今回は、旅田昌典さん(たびたまさのり)自身についてや畜産農業への想いを伺った。

旅田昌典さん(たびたまさのり)
和歌山県和歌山市出身 
2014月7月〜2014年12月 サンマ漁船の甲板員
2015年4月〜2017年11月 株式会社地域法人 無茶々園風早農場 農場長
2020年3月〜現在 たびちゃんファームにて活動中

目次

大学生の時に今後の将来に危機感を感じ、農業に携わりたいと思うようになった。

大学生だった頃にリーマンショック、ユーロ危機について知り今後自分が生きていくには生活が大変になるのではと危機感を感じました。国産や安全を意識した食べ物作りを今後していきたいと考えるようになりました。

その後、独学で勉強したり自分で足を運んで学んだり、農家になる前に漁業に1年関わらせていただいたりなど様々な経験しましたが、約6年前に農業の修行をしたいと思うようになり、修行先を探しました。

個人的に、将来地元(和歌山)に戻ってきて農業をしたいという気持ちがあり、同じような気候である西海岸の地域で温暖な気候の場所を探していました。

当時は地元(和歌山)で農業したいという思いがあったのですが、実際に生活のためのお金を稼ぎながら有機農業を学べる環境が当時は和歌山にはなかったです。

その後、地元と同じような地理的環境で学べる場所の候補として考えていた場所が、愛媛県と熊本県でした。

どちらも研修を経験しましたが、愛媛の方々から強くお声がけいただいたこともあり結果的に愛媛での就農を決意しました。

そして愛媛で農業を学ぶ内に、愛媛には大きい地方都市(新居浜市や四国中央市、松山市など)があり、各地域で活躍されている農家さんが各々いて面白いなと感じました。

しかし、それぞれの地域で情報量の違いを感じることも多かったため、一同に集まることができるような場所づくりが出来たらいいのでは、と愛媛の可能性を感じ、地鶏を育てている人から声をかけていただいたこともあり、鶏の畜産農業を始めようと思いました。

周りがあまりやっていないことに挑戦してみたい

鶏の有機農業がいいなと思った理由は、自分の住んでいる周りの方々があまりやっていなかったからという理由もありました。日本で有機農業や自然農法を取り扱う農家は少なく、その中でも畜産農業でこだわった生産をされている農家さんは、今の畜産農業のルールや初期投資がかかること、お金をやりくりすることを考慮すると難しいジャンルでした。なぜなら鶏を育てるために鶏舎を作ったりエサ代がかかったりするからです。

僕自身の場合は、周りの環境や手助けもあり鶏の畜産農業に挑戦することができました。

鶏を育てるにあたって小規模でこだわって育て、環境負荷をかけずに美味しい鶏を生産できる動きが全国各地で生まれるような発端になりたいと思いました。そして、その発端のお手伝いをすることによって、人々の新しい視点になれればなと思いました。

畜産農業は、お肉がどうやって生産されているのかなど、人々が注目して向き合うことが少なかったり、地鶏ひとつでも色々な地鶏があったりするため、そのような内容に自分が挑戦することは面白いのではないかと考えました。

畜産農業とは、地鶏とは

畜産農業の中でなぜ鶏を選んだのでしょうか?

周りに地鶏をやっていた方がいたという理由もありますが、牛や豚、鶏という主な畜産農業の中で鶏が一番低コストで動物性たんぱく質が高く、体に良いものを提供できると思ったからです。

主な畜産の動物には、牛・豚・鶏がいます。

この3種類の動物に対して1000キロカロリー分のお肉を生産するための資源コストとして、鶏の場合は3〜4倍、豚の場合は8〜10倍、牛の場合は12倍のカロリー分の餌を与える必要があります。*1

水を飲む量も順番は同じで、牛が一番多いです。

飼育する面積も必要で、鶏だと1㎠(平方面積)当たり10羽以内*2だったら地鶏として認定される飼い方ですが、比較的まだゆとりがある飼い方です。ブロイラー(いわゆる、若鶏)の鶏舎ではぎゅうぎゅうの面積で育てています。

牛では放牧する場所や飼育するために広大な場所と牧草を準備する必要があり、アマゾンなどの森林が伐採されて*3世界の肉の需要を補っている状況です。

そのような状況を踏まえ、環境負荷をかけたくないという意味でビーガンになる人もいます。

ブロイラー(若鶏)と地鶏はどのような違いがあるのでしょうか。

鶏の中で98%がブロイラーです。(いわゆる、若鶏です。)ブロイラーとは、鶏の種類であり卵から生まれてから50~58日程度でお肉になって出荷されるものを指します*4

その育成方法が鶏に対しても健康的な育て方で環境にも良いものであれば問題ないのですが、お肉の質としてはあまり良いとは言えず、鶏の育て方や環境について注力して規定に基づいたお肉の質が高いものがいわゆる「地鶏」です。*5

地鶏を育てる難しさに直面し、断念

地鶏と選定される条件とはいったいどのようなものでしょうか。

鶏の元を辿れば在来種という鶏の種類が存在し、在来種は明治時代以前に日本に定着して飼育されていた鶏のことを指します。外国から来た鶏であっても条件に当てはまれば在来種とされており、しゃもや烏骨鶏(うこっけい)、名古屋コーチンなどが当てはまります。

在来種の中でも地元の在来種である鶏の50%以上の血が含まれた状態*2で、交配させてつくった鶏を地鶏と言います。各都道府県の農業試験場が地鶏を作っていて、愛媛では丹原にある「ひめっこ地鶏」が開発されています。各農業試験場で、ひなの生産を行っています。

地鶏の餌や飼育日数は決められていて、県のブランド認定がされていることが多く、地鶏同士の自己増殖で生まれた鶏が必ずしも地鶏として認定されるとは限りません。*5

※第一世代(最初に生まれた子どもたち)しか地鶏として認定されない場合が多いようです。

なるほど…地鶏を育てるのはとても難しいのですね。

そうです。地鶏は、各都道府県の農業試験場で開発された品種で、決められたガイドラインに則って肥育する必要があり、特にエサに決まりがあることに賛同できず扱うことを諦めました。これからは、在来種の生産から始め、他の地鶏と被らない品種同士の自分オリジナルの交配を作ることができればいいなと思います。

環境にもよく、健やかな鶏を育てたい。

たびちゃんファームが作る、サステイナブルチキンについて教えて下さい。

サステイナブルチキンと呼んでいる理由は、まだ食べられるにも関わらず捨てられている食材やビール粕やおから、ごまかす(珍味カス)などを餌として再利用しているからです。

その他にも、くず米や酒米の削りかす、米ぬかなどを発酵させて餌としてあげています。

愛媛で捨てられている、まだ食べられる食材を鶏の餌として再利用することで、環境に良い方法で地元のリサイクルを手伝っている気持ちです。

鶏舎に関しても、木材などを再利用して今は使われていない場所をリノベーションして作っています。

どんな人に食べてもらいたいですか?

やはり愛媛の方々に食べていただいて地産地消を目指していきたいですが、特に健康を考える方や食にこだわっている方々に食べていただきたいです。また、余すところなく味わってもらいたいという思いもあるので、できるだけ一部分だけでなく1羽分の購入をご検討いただければ嬉しいなと思います。

最後に

僕は多様性について、選択をひとつ増やすことだと思っています。

畜産農業ひとつでもいろいろな選択があるよね、と社会に示せたらなと思います。

今後も、いろんな資源やエネルギーを無駄なく利用し畜産農業を行っていきたいと思っています。

▼たびちゃんファーム|購入はこちら
https://ticket.tsuku2.jp/eventsDetail.php?ecd=50211017721423
▼旅田さん|HP
https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000115158
▼たびちゃんファーム|Instagram
https://www.instagram.com/tabichan_farm/

参考文献
*1:https://wedge.ismedia.jp/articles/-/12721?page=3
*2:https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1612/spe1_02.html
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61625430X10C20A7000000/
*4:http://www.fmric.or.jp/trace/h19/casestudy4/chap_6chicken.pdf
*5:https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/jas_tyousa_kai_sryou2_150609.pdf

ゆき / Writer

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