「人の集まりをデザインしたい」愛媛県で産直事業やレンタカー事業を展開する株式会社Local Arctの代表、藤岡祐太さんの地域や人と関わる想いとは。

今回は、「人の集まりをデザインする」を理念に、泥臭くどローカルに生産者と消費者を繋ぐ活動をされている株式会社Local Arct代表の藤岡祐太(フジオカ ユウタ)さんをご紹介します。

藤岡祐太(フジオカ ユウタ) さん

2000年、愛媛県出身。
名古屋大学工学部環境土木建築学科卒。
株式会社Local Arct代表取締役。
高校在学中、地方創生に興味を持ち、2017年愛媛大学社会共創コンテストで地域課題部門奨励賞を受賞した。
大学在学中から現在の産直事業を始め、2022年7月に株式会社Local Arctを設立。
「人の集まりをデザインする」をコンセプトに、「泥臭く、どローカル」に産直事業やレンタカー事業を愛媛県各地で展開している。若者が地域に集まる、活動できる、学べる環境を整えるべく活動中である。

まずは、自己紹介をお願いします。

現在、株式会社Local Arctの代表をしている、藤岡祐太と申します。

北条に母方の祖父母がいたこともあり、小さいころから北条の里山を駆け回っていました。高校に在学中、進路を考えるうえで漠然と地方創生に興味を持ち始めました。一口に地方創生といっても、様々なアプローチがあると思っていて、自分がやりたいアプローチを模索していました。

そんな中、祖父母が材木業を営んでいたこともあり、建築に興味を持つようになりました。
何かを建てるということは、そこに人が集まるということが前提になります。これが、僕の「人の集まりをデザインする」の根本になりました。その結果、僕なりの地域創生に対するアプローチの手段として建築を選び、名古屋大学工学部環境土木建築学科へ進学することになりました。

幼いころから、豊かな自然に触れて育ったのですね。では、建築学科に進学した後、全くの別分野である産直事業に着手したきっかけは何だったのでしょうか?

実は、産直事業を選んだのは偶然のようで必然でした。
私が初めて産直事業に関わったのは大学1年生のころで、長期休暇に銀天街にあった産直市の「ぎんこい市場」で短期のアルバイトをした頃です。
ここで、農産物をツールとして人と人、地域と地域がつながる様子を目の当たりにし、魅力を感じました。大学で4年間学んだだけでは何億、何兆のお金が動く建築に関わることはできないと思いました。そこで、自分の興味関心があることを軸に、人の集まりをデザインできる事業を模索していく最中で、産直事業にたどり着きました。
100円のキュウリを売ることで、今の自分にも人を集めることができると思ったのです。「食」というのは普遍的で、誰しも関係のあることです。ここに無限の可能性と人の集まりを感じ、その足掛かりとして産直事業に取り組むことを決めました。

そのようなストーリーで別分野の産直事業に踏み出されたのですね。産直事業として、具体的にどんな活動をしていますか。

現在は、主に食に関する様々な事業に奮闘しています。まずは、三津浜商店街内で野菜の無人販売をしています。また、毎週土曜日には、松山市の花園通りで「花園土曜産直市」に出店し、農産物の対面販売を行っています。
この販売は、毎月第4日曜日にも行っています。ほかにも、実際に生産者の下を訪れて野菜の仕入れを行い、カットなどの加工や包装を行って、ホームセンターの産直コーナーへ卸しています。
まだまだ、開拓の余地を感じていて発展途上な状態です。

Local Arctさんのコンセプトとして、「人の集まりをデザインする」があげられると思いますが、これはどういう意味でしょうか?

このコンセプトが生まれたのは、高校3年生の時でした。当時の学年主任の先生に勧められて、愛媛大学の社会共創コンテストの応募することにしました。このコンテストのテーマとして選んだのが、「人の集まりをデザインする」です。建築で例を挙げると、何か建物を建てる前に、必ずどのような人を対象にするかを想像して、場所やデザインなどを考えます。これは、将来的にどのように人をこの場所に集めるかということを考えているということです。つまり、自分がなにかを企画し場所を提供することでたくさんの「出会い」を生み出す。これが「人の集まりをデザインする」ということです。

今思い返してみると、この時の構想を今の自分にできる手段で実現している途中のように感じるので、この時の構想が今の自分の軸となっているように感じます。

土曜産直市の取材に伺った際にも、自然と人が集まって交流が始まっているのが印象的でした。一度聞くと耳に残る素敵なキャッチフレーズですよね。ところで、Local Arctの名前の由来はなんですか?

僕の活動の根底には、地方創生があります。ですので、地域のために活動するという意味を込めて、「Local Act」にしました。ただ、最終的には建築を介して人の集まりをデザインしたいので、ArchitectureのArcを含めて、Local Arctという名前にしました。

つまり、現在は産直事業をメインに活動されていますが、今後は建築にも着手したいと考えているのですか?

そうですね。今後は、産直事業で作り上げたコミュニティを利用した他事業展開を考えています。今奮闘している産直事業は、建築で言うところの基礎だと思っています。この上に、建物本体を立てていくイメージです。

私の活動の軸として、地方創生が根底にあります。地方創生とは、「その地域を思う人がどれだけ増えるか」ということだと解釈しています。
若者がそのように地方に関わっていくには、まずは知ってもらうこと。その次に、実際に現地へ行く手段があること。最終的には、その地域に滞在できる環境が必要であると思っています。
この、知る→行く→滞在するという流れを私たちの事業で実現したいと考えています。この3段階のうち、「知る」という段階は今の産直事業で実施中です。     

次の「行く」に関しては、9月からレンタカー事業を始めました。地方は交通の便が悪いことが欠点です。そこを克服して、若者が地方へ飛び込める環境を整える。その思いで、レンタカー事業を開始しました。
しかし、1日だけ行っても、体験できることは限られています。そこで、その地域に滞在できる環境が必要だと思うんです。この「滞在する」という部分で、僕が大学で学んだ建築を実現したいと思っています。つまり、最終的には、ホテルのような滞在施設を設計し、建築したいというのが現在の目標です。

なるほど、具体的なビジョンを3段階に分けて、それを実現するための手段として事業を展開されているのですね。
それでは、活動を続けていく上で、なにか悩みや苦労したことはありましたか?

いざ、産直事業を始めると、商品に値段をつけることで悩みました。仕入れ値にいくら利益を乗せるか。利益をあげるということに初めはかなり抵抗がありました。
そこで、数字だけを見るのではなくて、実際にどれだけの人と関われるのかという視点で考えることにしました。判断に迷ったときは、より人の集まりが大きいほうに舵を切るようにしています。
私はこれを、尊敬する師匠の言葉を借りて「人儲け」と呼んでいます。将来的にずっとこの事業を続けていく覚悟があるから、目先の利益よりも、人との出会いにお金をかけるという考え方に変えることで、この悩みを克服しました。

生まれた悩みに対して、発想や考え方を変えることでそれらを克服してきたのですね。それでは、活動を続けていくうちに得た「気付き」はありましたか?

人とのかかわりを大切に活動することで、現場のニーズが見えるようになりました。よく、花園土曜産直市に買い物に来てくれるおばあちゃんが、「かぼちゃ1個も食べきれない」と言っているのを見てハッとしました。スーパーでは基本的に、店頭に並んでいる現品限りで、なければあきらめるということになります。でも、それではその地域で暮らす人の生活を支えることはできません。
だから、カットしてほしいとか、これがないと困るといったお客さんの意見を聞き入れて、できるだけ要望に応えるようにしています。このようなリクエストを言える間柄を築くことも大事ですね。

加えて、要望があったときに、潜在的なニーズは何なのかを探るようにしています。過去に、ブロッコリーの頭だけが欲しいと言われたことがありました。それはなぜなのか。
その答えは、手が不自由でけがをしたくないからでした。このような潜在的なニーズを蓄積して、商品をそろえていくことで、お客さんの生活を支えることができる八百屋になれると思っています。

ニーズを踏まえて、小さいサイズのかぼちゃが店頭に並んでいる。

あとは、できるだけ私たちで必要なものがそろうように商品を仕入れています。これを実現するためにも、市場にあるものは愛媛県産を集めていますが、ないものは積極的に県外からも仕入れるように工夫しています。県内産に固執するのではなく、柔軟に仕入れることが重要だと思っています。

店頭には愛媛県産の野菜を中心に県外産の野菜も並んでいる。

生産者のもとを訪れることの意味はどのように感じていますか?

やはり、多くの人と関わりを持つということを大切にしている以上、現地に行くことでわかること、現地に行かないと分からないことがあると思っているので、日々様々な人の下へ足を運んでいます。

 産直事業に限って言うと、市場の値段の変化だけを見ていては、何もわからないということがあげられます。たびたびニュースで、○○の値段が高騰とか、今は○○が安いなどの報道がありますが、生産者と関わることでその理由がわかり、先を読んで仕入れをできるようになってきました。

また、お盆や年末年始などはチャンスだと思っています。このような時期には、市場が閉まってしまいます。しかし、野菜の生育はそれを待ってはくれません。このように出荷先がない野菜を、品薄で困っている販売者や消費者の下へ届けることがLocal Arctにはできます。このような特殊な事情があるときは、現場に密着している私たちの底力を見せるチャンスだと思ってたくさんの場所を走り回って仕入れを頑張っています。

Local Arctのバンには、各地から仕入れた野菜や果物が所狭しと並んでいる。

生産者にとっても、消費者にとっても、Local Arctさんに頼めばどうにかなるかもしれないという、いわゆる「最後の砦」のような存在ですね。
では、実際に現地に赴くことで見えた課題はありますか?

たくさんあります。印象的な出来事として、夫婦で農業を営んでいる方のうち、旦那さんが入院になって、収穫をどうすればいいのか困っていたことがありました。そこで、私たちは収穫を請け負って、農家の奥さんが旦那さんの病院に行ってあげられるように協力させてもらいました。このように、ビジネス感情抜きで何か力になりたいと思って行動することで、信頼関係を築くことができるのも私たちの強みだと思います。

 また、生産地に目を向けると過剰に余っている農産物がある一方で、物はあるのに店頭では品薄になっていたり生産地で廃棄になってしまったりするケースもありました。いずれも、需要とのミスマッチや人手不足、生産者側と販売者との連携不足などが原因です。このような場合、生産者側と販売者・消費者側の事情を知っているので、Local Arctが橋渡し的な役割を担って、両者の課題を解決することができました。このようにして、「消費者・生産者・販売者が笑顔になる最適解」を模索しています。

現在、地方には人手不足や、病気などで困っている農家さんはたくさんいます。このような人たちに何か協力できることはないか常に考えています。その過程で、これまで農家さんが積み上げてきたノウハウを感じ取ることができ、自分にとってもプラスになっています。

このような地域の問題の解決方法は、生産者と消費者や販売者の双方にかかわりを持つLocal Arctさんならではですね。それでは、株式会社Local Arctさんの今後の目標について聞かせてください。

Local Arctの今後の目標は、マーケットサイズの拡大です。会社である以上、最終的な目標は利益をあげることと捉えがちですが、私はそれだけを目標にはしていません。
活動の軸が「人の集まりをデザインする」なので、自分にかかわってくれる人、言い換えるなら「知り合い」をもっと増やすことが目標だと思っています。
今の産直事業を続けることで、生産者や消費者とたくさん出会え、自然とコミュニティを拡大できると思っています。これが産直事業の強みですね。
このようにして築いていったコミュニティを生かして、冒頭でお話しした、地域を知る→行く→滞在するための様々な他事業を展開していくことが当面の目標です。

普段から、人とのかかわりを大切にして、人の話に耳を傾けている藤岡さんだからできるアプローチですね。それでは、今進路や仕事に関して悩んでいる人に向けて、メッセージをいただきたいです。

私は、一時期大学院に進学しようと考えたことがありました。それは、みんながそうするからという固定概念があったからかもしれません。他にも、周りの人に都市から地方へ戻ることが落ちこぼれたとみなされたり、家族からの反対があったりして、一度起業するという思いを隠して進学を選択しようとした時期がありました。
しかし、そのような選択の先に自分が輝く未来をイメージできませんでした。また、大学の恩師には、「自分に正直になりなさい。」と喝を入れられました。
このような出来事から、自分で自分の可能性を閉ざしている現状に気づくことができました。「人の集まりをデザインする」という軸をもって、思い切ってやってみようと考えを改めたことで、視界が開けたように思います。

 現代では、いい大学に進学すること、いい企業に就職することが重視される風潮が漠然とあると思います。しかし、自分の将来を考えるうえで、自分の軸をもって自分が評価されるような道を選んでいくというのが大切だと思います。

最後に

いかがでしたか?

普段何気なく手に取って口に運んでいる農産物には、たくさんのストーリーがあり、様々な課題が隠れていることがわかりました。また、自分の将来について不安になったとき、自分の中で何か一つ軸を持つことで、それを実現するための道が開けるような気がします。

行くだけで、様々な人との交流が始まり、いまの自分自身の課題を解決するヒントが得られるかもしれない「魅力的な八百屋さん」Local Arctさんをぜひ訪れてみてください。

―株式会社Local Arct―
2022年7月設立。地域というLocalと行動を表す Actに加えて、代表自身が最終的には建築を介して人の集まりをデザインしたいという想いから、ArchitectureのArcを合わせたことが由来。現在は、毎週土曜日の花園通りでの移動販売、三津浜商店街内での無人販売、各種イベント出店、愛媛県内各地の産直コーナーでの販売、弁当などの配送、レンタカー事業など幅広く事業を行っている。

―出店情報―
・花園土曜産直市:
松山市花園通り 毎週土曜日午前10時-午後2時頃まで。少雨決行。雨天中止。 
※天候によって中止となる場合があります。
・花園日曜市:上記同様、松山市花園通り 毎月第4日曜日に開催。
・無人販売:
松山市三津2丁目11-14(三津浜商店街内)
・ホームセンター併設産直コーナー:
値札シールのLocal Arctが目印。
・レンタカー:2022年9月より新たに開始。予約・申し込みは、
Instagramの@golocal_rentacar_56経由で。
・Instagram:
@local_arct@golocal_rentacar_56
・Twitter:
@Local_Arct

花園土曜産直市の様子。手書きのポップと所狭しとならんだ野菜や果物が目印。

reko / Writer・Photographer

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