「“毒にも薬にもならない”写真が世には溢れているなかで“毒”になる写真を撮りたい」愛媛県内子町の写真家・水本誠時さんが現在開催中の写真展『愛毒』に向けての想いとは

愛媛県の内子町小田で、2019年3月1日に合同会社「おだいじPROJECT」を設立された水本 誠時(ミズモト セイジ)さん。「おだいじPROJECT」の意味にも込められている「小田を大事に維持する」との思いをもとに、写真業を中心に様々な活動をされています。
そんな愛媛県内で精力的に活動をされている水本さんが、写真展 Vo.4『愛毒』を2022年4月17日まで開催しています。
今回は、個展に込められた想いや自分自身の想いを表現することについてお伺いしました。

水本 誠時(ミズモト セイジ)
写真家
高校の寮の舎監/道の駅八幡浜みなっと スタッフ
愛媛県旧小田町参川地区出身 1994年5月27日生まれ。
愛媛大学法文学部総合政策学科
大学時代に観光まちづくりを専攻。
出身である内子町小田地区の魅力あふれる人や資源の良さをもっと多くの人に伝えたい!と思い、地域情報誌「愛媛Komachi」を発刊する(株)アイクコーポレーションに入社。
営業職の傍ら写真の勉強をする。

2019年3月1日 「合同会社おだいじPROJECT」を創業。
現在はどい書店をメインに活動中。

▲どい書店の一部メンバー

写真展 Vo.4「愛毒」
「写真の寿命ってどのくらいなんだろう?」

SNSの発達で世の中には「写真」が爆発的に増えた。
Twitterのツイート、インスタのストーリーで写真は毎秒生産され、そして毎秒消費されていく。
かつてこんなに写真が短命だった時代があっただろうか。
いや、動画が全盛のいま、もっと短命になっていくだろう。

大量生産・大量消費のこの時代、心をじわじわと蝕み、消化するのに時間を要し、身体に留まり続けるようなそんな毒を私は愛したい。

目次

写真を撮ることで人の魅力を引き出し誰かの夢を応援する

今回は水本さん自身を表現された個展だと伺いました。現代におけるコロナウイルスや煙草、SNSなど現代における様々な「毒」をテーマにされていますが、水本さんはなぜ写真を撮り始めたのでしょうか。

大学時代にゼミ活動の記録写真を撮っていたり、チェキやフィルムカメラを使って撮影していたりしたことはあったのですが、本格的な一眼カメラを買ったのは社会人1年目の時です。

そもそも僕が写真を撮り始めたのは、人と会うきっかけを作りたかったからなんですよね。撮影を言い訳に人に会えるじゃないですか。ていのいい言い訳です。(笑)始まりはあまりポジティブな理由ではなかったかもしれません。あとは単純に写真を撮ることが得意なことの1つでした。

例え話にはなるのですが、年や月単位で目標を決めて長期的な目線で仕事のペースを調節しながら働く一般的な会社員のような働き方より、不定期かつ単発的な仕事を重ねていく”短距離走”のような働き方のほうが僕には向いていました。その中でも「人物写真」は僕だからこそ撮れる一瞬や引き出せる表情があると思っていて。写真を撮ることで人の魅力を引き出して「夢を応援すること」がとても好きで楽しいです。

以前、魅力的だけれども自分に自信がない方を撮影したことがあったのですが、その際にいかに彼女の魅力を引き出せるかを考えて撮るように意識しました。結果、自分の撮った写真を彼女がすごく喜んでくれました。さらに少し自分に自信が持てたようで、その経験がすごく嬉しかったんです。

人に喜ばれることが嬉しかった」ということが僕にとっての原体験なのかもしれないです。

▲小田の風景

きっかけがポジティブなものではないとしても、自分の「好き」や「得意」に繋げたことで今があるのですね。水本さんのお話を聞いていると「人が好き」なのかなと伝わってきました。

そうですね。人を撮るにあたってその人の魅力を引き出したいと1番に思うので、人が好きなのかもしれないです。

自分が心地よいと思えるものをつくることと、自分の好きを貫くことを自由にできる人が増えてほしい

表現することは本来自由であっていいと思うんです。「これはSNS映えするだろう!」と他者の評価を気にして撮っているうちは面白いものは生み出しにくいのかなと思っていて。今の時代には尖っていて観た人の心に深く刺さるものを生み出す方が大事なのだと感じています。

今の時代、とは?

現代は特に写真の消費に対するスピードがとても速くなったなと感じています。だからこそ誰にでも広く浅く当てはまるものではなく、誰かに深く刺さるものの方がより共感を生み出すことができるのではと思っていて。例えば、「弱み」を隠すのではなくあえてさらけ出したり、周りの評価を気にせずに自由な表現をしたりすること、そういったものが刺さるのかなと感じています。

今回の個展では、中でも「煙草」と「ストリップ」を推しているのですが、自分がこれだけ良いと思えるものだからこそ、良い作品が撮れたに違いない!と思っています。(笑)

この個展はとにかく自分の好きを表現した個展になっているかなと思います。こんなにも好きを詰め込んだのだから伝われ、といった「推しへの愛」に近いのかもしれないです。そういった気持ちは現代では多くの方が持っている感情なのかなと思います。

なので、表現をすることってもっと自己満足でいいと思うんです。自分が「これは最高だ!」と思えるものをつくれるかどうか、それが表現において1番大事だと思っています。「自分の好きを貫くこと」をもっと好きにできる人が増えたらなと思います。

“毒にも薬にもならない”写真が世に溢れているなかで、“毒”になる写真を撮りたい

今回、写真展の名称が『愛毒』ですが、どういった意味が込められているのでしょうか。

毒にも薬にもならない”写真が世には溢れている中で、””になる写真を撮りたいと思ったことがきっかけです。

先ほども挙げたのですが、現代の1つの問題として写真の消費が早すぎるのではないかと感じています。いいなと思っても2,3秒すると忘れられてしまうような「毒にも薬にもならないコンテンツ」が増えているし、そういった仕組みでSNSなども構成されている気がしています。だからこそ、誰かの心の奥の方に毒のようにじんわりと留まり続けふとした時に思い出すような、そんな写真を残したいとの思いから今回の写真展の企画を考えました。

2022年3月4日からテーマが2つ追加されて、「煙草・コロナ・彼岸花・孤独・SNS・性欲・写真・田舎」の8つの毒のテーマを取り上げているのですが、ただの問題提起だけでなく、同時に色々な毒が秘めた側面や「」の美しさも感じてもらいたいです。

また、今回の写真展で工夫したのは写真だけでなく様々なライターの方に協力してもらい、各テーマに沿うような文章も書いてもらうことでより世界観を深掘りできるようにしました。そういう風にテーマを色々な観点で感じ取ってもらえると嬉しいなと思っています。

▲テーマ1「煙草」
▲テーマ3「彼岸花」
▲テーマ4「孤独」
▲テーマ8「田舎」

Sea Sideでは「一歩踏み出せない人にきっかけを提案する」ことをこの人物取材記事を通して届けているのですが、水本さんは今回、写真展を訪れた人たちにとってどんな「きっかけ」になったらいいなと感じているのでしょうか。

自分の好きなものを堂々と言えるようになって欲しいのかなと思います。例えば表現したいものやことがあるにもかかわらず、一歩が踏み出せない、何かが障害になっていて立ち止まっている人たちにこんな表現方法や出し方もあるのだという「提案」になれば良いのかなとも思ったり。しかし、自由には必ず代償が伴います。自由を得るために地道な努力や信頼関係を他者と築くなど、できることを着実に積み重ねていく必要はあるのかなと思いますね。今回の例で言うと、昨年の天神産紙での僕の写真展「綴避行」で新規のお客さんを多く呼べた、という過去の実績があったからこそ、個展の依頼主の五十崎社中の社長・斎藤宏之さんに自由なテーマでさせてもらえたと思ってます。

ただ、今回の写真展の作品に関しては受け手に何かを押し付けるつもりは一切なくて。結果として何かが心に残ったり刺さったりする機会になればそれはそれで嬉しいなと思っています。

ありがとうございました。最後に一言お願いします!

今回の写真展『愛毒』は誰かを救おうと思って始めたわけではなく、自分の好きやわがままを詰め込んだ個展です。そんなワガママな個展ですが、ぜひ立ち寄っていただければ嬉しいです。会期も4/17(日)まで延びたのでぜひお越しください!
また、遠方の方はぜひ写真集を手に取っていただけると嬉しいです!

写真集のご購入はこちらから

■水本さんのSNS(写真展の最新情報)はこちら
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■写真展会場情報
天神産紙工場2F
営業時間:午前9:00〜午後5:00
所在地:〒795-0303 愛媛県喜多郡内子町平岡甲1240-1
アクセス:
最寄り駅
・内子駅:約2.5km 徒歩で約32分
・五十崎駅:約2.9km 徒歩で約38分
最寄りバス停
・内子町役場:約482m 徒歩で約6分
・ふるさとステーション:約552m 徒歩で約7分
・鳥越(内子町):約1.3km 徒歩で約16分

risa / Writer

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