青年よ、その小さな町の中で。~夢を語れ~

電車の中で、男は疲れ果てていた。

 激動の時代、リモートワーク、人びとはマスクを着けて息苦しそうに歩き、それまで生活していた環境が一気に否定される。慣れない生活様式に、世間を振り回すのは暗いニュース。長く眠っても、銭湯に行っても、お酒の力でも、男の疲れは癒えなかった。

 そういえば。学生で満たされた電車の中で考える。今日の晩飯は何にしよう。気分転換に久しぶりに外食でもしてみよう。そう思った瞬間、男の目にあるものが飛び込んできた。

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 青地の看板に、白い文字で大きく書かれたそれは、インパクトを与えるのには十分だった。そういえば、最近話題の二郎系ラーメンの店ができたんだっけか。男は吸い寄せられるように、行列に並ぶ。話題の店には、2、30人ほど並んでいた。長い行列だったが、待ち時間はそんなに長くない。

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店の中は、至って普通のラーメン屋。だがしかし、その天井にはたくさんの手形。様々な人の夢が、この手形に描かれている。

 男が注文したのは、豚ラーメン小。小だが、300gあるらしい。厨房の中では、大量のお客さんに合わせて捌かれていく麺。茹で上がった麺がスープとともに丼に盛られ「ニンニク入れますか?」と一言。もちろんです。

ラーメンが出てくる。店員さんに、「行ってらっしゃい!」と見送られながらそれを一瞥(いちべつ)。まずは見た目から圧倒される。大きな丼に、高く盛られた野菜とチャーシュー。その頂点にあるアブラは、霊峰富士の冠雪(かんせつ)を彷彿とさせる。

 男は、この巨大な山を前に、興奮を抑えられなかった。

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 一口食べれば、暴力的な旨味。しかしそれは、しつこいわけではない。モヤシとキャベツはまだ野菜としての食感を残していて、チャーシューは味が染みたしっかり系で、それ単体でも完成されている。山の下に眠る麺も太麺で、食べごたえ抜群。そして端に盛られたニンニク。量は少なくても、その香りと味は凄まじく、彼が香味野菜の頂点であることを納得させる。昨今のヘルシー志向とは真逆を行く、そんなラーメン。しかし、食べ進めるごとになんだか元気が湧いてくる気がする。これが、ハマるってやつか。男はすべてを忘れ、一心不乱にそれにかじりついた。

 久しぶりに、夢中で何かを食べるということをした。

夢を語れ…か。松山にも、こんな店があったんだな。思えば、俺の夢ってなんだったっけな。

男は忙しなく移り変わる世の中で、忘れていたものを思い出した。また来よう。そのためには、明日から頑張らなくちゃな。

目次

夢を追い、松山に来た。

 皆さま、こんにちは。Robert(ロバート)と申します。今回は松山で話題のラーメン屋さん、『夢を語れ』さんを取材させていただきました。彼らが掲げる目標は、「全国47都道府県に夢を語れる店を作る」こと。その波は愛媛県にも。そしてその背景には、夢を持った一人の大学生の存在がありました。

「僕の夢は、みんなが夢を語れる場所を作ることなんですよ。」

 そう語るのは、順天堂大学2回生の深川智行さん。彼は夢をかなえるために、縁もゆかりもない松山の地にやってきたという。

 そんな彼に松山にきて一番驚いたことを聞いてみると、「女性がメイクしてるんですよ。あっち(順天堂大学)ではそんなことなくて、びっくりしました!」と答えてくれた。その笑顔は純粋で曇りはなく、今の生活が充実していることを物語っているようだった。

 そんな彼だが、実は2021年に夢を語れ千葉のオープンを任されることになった。彼自身もまた夢を追いかけ、修行に励んでいる。

 そんな深川さんがいる夢を語れ松山総本店。夢を追いかける彼の屈託のない笑顔を見に、そして夢を語りに訪れてみてはいかがだろうか。

Robert/Writer

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